旅人さながらの雰囲気を。独特の風合いをしたセットアップに見る服作りと加工の楽しさ

人生で初めて、セットアップを揃えました。

と言っても、そんなにカッチリした雰囲気のものではなくて。

 

学生の頃は、中二病ならぬ大二病に犯されていて、全身真っ黒のコーディネートが大好きで

モードファッションこそが正義。オールブラックこそ、最上のお洒落なコーディネート。本当にそう思っていました。

 

だから、その思想に従ってCOMME des GARCONSの服を着る。DOVER STREET MARKETで服を買う。新宿伊勢丹へ通う。

そうやって服を買い揃えていましたが、いつしか自分はタイトなシルエットやモノトーンのファッションよりも、ワイドパンツやオーバーサイズの方が好きなことに気付いてしまって。

 

JOHN LAWRENCE SULLIVANよりも、iroquoisの方が好き。

大学生の頃は、心からオールブラックを好きになれない自分に少し嫌悪感を覚えていましたが、今となっては、ぼくは自分が本当に好きな服装をようやく知って。

そんなに好きでもないブランドの服を着て流行に乗るよりも、本当に好きなブランドの洋服を着ていた方が気持ちいい。

それが周りと違っても、自分らしさを貫けばいい。いつか、それが自分だけの個性になるから。そう信じて、モノトーンファッションばかりの世界から身を引きました。

 

今回揃えたセットアップは、先ほども書いたように人生で初めてのもの。

まるでスーツのような上下セット。”セットアップ”といえば、そんなものを思い浮かべていました。

一方でぼくが購入したそれは、そうじゃない。非常に独特の世界観を持ったセットアップなのでした。

 

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ぼくに洋服の楽しさを教えてくれた ”SCHWARZWALD”

ぼくが大学1年生だった、2014年。大学には高校と違って制服がありません。ここからが、必然的に日頃の服装にも気を遣うようになる時期です。

そのタイミングでぼくが飛び込んだ世界。それは、憧れのミュージシャンお気に入りのブランド、iroquoisが展開するそれでした。

 

ジャケットの内側一面に大きく描かれた、黒い森

当時、ブランドが展開していたコレクション。2014年春夏”SCHWARZWALD”

ドイツ語で”黒い森”を意味するこの単語。このシーズンにiroquoisのお店へ行くようになったことをきっかけに、ぼくは洋服の楽しさに没頭するようになりました。

あの頃はよく恵比寿へ行って、iroquoisとセレクトショップのSHELTTER、代官山まで歩いてSHAREEF、セレクトショップのOへ行ったり、よくしていました。

 

代官山、SHAREEFの近くで信号を待っていたら、お笑い芸人の又吉直樹さんが歩いてきて、(当時のぼくは割と奇抜な格好をしていたので)がっつり目が合って、びっくりしたり。

ぼくは又吉さんの小説や本(火花、夜を乗り越える、東京百景・・・)を読んでいて、ファッションも独特で格好いいと思っている芸人さんで。

 

もちろん話しかけるなんてことはできませんでしたが、ただただ感動していました。

当時の又吉さんはよくFRAPBOISの服を着ていると聞いていたので、当時その周辺に店舗があったそれを思い浮かべては、本当に着ているんだ・・・と思ってみたり。

 

・・・話がだいぶ逸れましたが、この記事ではセットアップをご紹介したいのでした。

iroquois 14ss collection “SCHWARZWALD”

非常に思い入れのあるこのシーズンより、”リネンチノクロス バイオウォッシュ”のセットアップのご紹介です。

 

異国の雰囲気が漂うノーカラージャケット

ノーカラー(襟のない仕様のことを指します)のジャケットと、着古されてくたびれた雰囲気がムンムンに漂う生地感。

 

この生地感を写真だけでお伝えするのって、本当に難しいことだと思っていて。

なので今回は、YouTubeに動画を載せてみました。

 

”リネンチノクロス”はリネン(麻)を使ってチノクロス(単糸で綾織り)に仕上げた生地のことで、上品な光沢を持っていることが特徴。

そこにiroquoisの、このセットアップでは製品加工でリネンが持つコシを抜き、クタッとした風合いに仕上げているそうです。

商品名に”バイオウォッシュ”とあるため、より着古された雰囲気を出すために酵素の溶液を用いて洗いをかけ、生地の凸部分を溶かし白くさせています。

 

ちなみに着古した服の生地表面が白くなるのは、生地の凸部分にあるセルロースがすり減っていくから、なんだとか。

新品ながらもそんな雰囲気を醸し出すため、あえてそのセルロースを溶かすような洗い方をする加工のこと。

よく聞く、似たような加工方法に”ストーンウォッシュ”がありますが、そちらよりも生地の痛みを抑えることができるそう。

 

綿と比べれば耐久性に欠ける麻を使った生地なので、洗いの方法にバイオウォッシュを選んだということなのでしょうか。

そういうことを考えると、どんな風に服作りを行っているのか、想像するのがより楽しくなってきますね。

 

製品加工で生地のコシを抜いたり、洗いをかけたりして出来上がった、リネンチノクロス生地のアイテム。

上の動画では袖を持って生地を揺らしてみたのですが、”ぷるん”と跳ね上がる独特のハリ感が伝わりますでしょうか。

 

リネン生地といえば風を通しやすく軽いイメージがあるかもしれませんが、こちらのアイテムには独特の重量感があって。

一般的なそれとは、まるで離れた場所に位置する生地感を持っています。使っている素材がリネンだからといって、どれも同じような雰囲気になる訳じゃない。

織り方や加工の仕方、洗い方によって想像もできなかったような生地感にも変化する。生地や加工の面白さ、奥深さをぼくに教えてくれました。

 

世界中に、ふらっと出かけるかのように足を運ぶ旅人かのような。無精ヒゲを生やし、どこか遠くを見るような目で今ではない未来を見ているような。

そんな人が着ているイメージ。このそしてセットアップには、随分と具体的ですが、そんなイメージがあります。

 

新品でも、古着屋に行ってもそう見かけない、独特の雰囲気を持ったそれ。

まずは、そのジャケットからご紹介します。

 

特徴的なのは、フロントに配置された複数のボタン。いくつも並んだこのボタンが、唯一無二の雰囲気を放っています。

ノーカラーのデザインに、たくさんのボタン。何だか日本っぽくなくて、中国の方が着ていそうな。そんなイメージ。

 

前身頃のボタン付近は、糸がほつれまくりの切りっ放し仕様になっています。あえての仕様がこのジャケット荒々しさと、旅人が長年着ているかのような雰囲気を感じさせて。

とても好きです。仮にこの部分が切りっ放し仕様になっていなかったら、スタイリッシュに仕上がりすぎていて手を出さなかった気さえします。

既にこのセットアップは独特の生地感によって、存分に”旅人感”そして着古された雰囲気が滲み出ているので、それだけでも好きなんですけど。

 

ポケットや裾、袖付近には色味の違う生地でワンポイントのアクセントが入っています。

写真だと、光を反射しているのでそう見える部分もありますが、紺色の生地が所々、白っぽく見える部分もありますよね。

実物を見るとここまで白くはなっていないのですが、やっぱり独特の、クタッとした雰囲気があって。

言葉ではどう表せばいいのか、表現に少し迷う生地感。それが間違いなくこの服の”深み”を増しています。

 

古着屋さんで見つかる、安い中国風のジャケットでは省かれることの多いポケット。フラップはちゃんと付いていても、物を入れるスペースはないフェイクだったりして。

こちらのジャケットには、ポケットがちゃんと備わっていて。

 

なんならジャケットの横には、ボタンで開閉できるベントまで付いています。これを開けて着ると、シルエットに余裕が出て、もっとゆるく着崩せそう。

ちなみに、袖にもボタンが付いているのですが、そちらも飾りではなく開きます。いわゆる本切羽になっていて。

本切羽仕様のジャケットって本格的で、高級感があって、とても魅力的。

 

ジャケットのそれって実際に使う機会はほとんどないのに、それでもぼくは絶対に本切羽仕様のものしか買いたくありません。

古着ならまだしも、そうでないジャケットでフェイクなのは、デザイナーズブランドの遊び心か量販ブランドの経費削減のどちらか。

ほとんど使わないのに、そんなところに変なこだわりを持つのって、何だか”男あるある”ですよね。そういった小さなディテールにまで惹かれるというか。

 

麻100%で、それなのにシワが付きにくく、仮に付いたとしても洗濯すれば割と元通りになってくれるこのジャケットの場合は、もしかすると使うかもしれませんが。

そう、洗濯に向かないリネン素材の洋服が多い中でも、このセットアップは洗えてしまうのも魅力のひとつ。

 

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シンチバックにサスペンダーボタン。古着好きにはたまらないパンツ

セットアップとして着る上で、相棒となるパンツ。先日、35度超えの暑い日に着てから洗濯を終えたばかりだったので、シワが伸びてとても綺麗。

あそこまで暑い日にはもう、ジーンズを履いていられませんね。麻素材のこいつに頼りました。

 

実はぼく、このパンツはもう1年くらい前から単体で持っていて。

暑い日にでも快適に履けるボトムスが欲しい。ぼくは短パンを部屋着以外では履かないので、それなら麻素材一択だろう。

そうして、どこかのブランド古着屋さんの通販サイトでたまたま見つけたこれを購入したのでした。

 

それから1年が経ったつい最近、同じ色かつジャストサイズ(iroquoisのサイズ2)でセットアップとして着れるジャケットをたまたま見つけたので、購入。

今までこのボトムスはオーバーサイズなのが気になってほとんど履かずに放置していたのですが、先日暑すぎる日に履いてから改めてシルエットの良さを気に入って。

迷いましたが、ジャケットも買ってセットアップにした方が単体よりも出番が増えるんじゃないか。そう思ったんです。

 

ブランド古着でたまたま購入したこのパンツはiroquoisにおける最大サイズの”3”。通常よりも大きめに作られていたこれは、ウエストが90cmオーバーあって。

ぼくのウエストを10cmほど上回るそれは、いくらベルトで締めたところで絶対に田舎の中学生がするような腰パン状態になってしまって。

 

また、ベルトで絞ればトップボタンの下にあるホックにも余裕が生まれるため、それが頻繁に外れてしまって。

下着が見えるようなことは絶対にないのですが、ホックが外れてるのって微妙に恥ずかしいような気がしています。誰も気づかないレベルだけど。

 

洗濯を終えた後で、ほとんどシワの伸びきった生地表面。意外にもツヤとハリがあるのが面白い。

製品染め(色のついた糸で織り上げるのではなく、服を織り上げた後で色の染め作業を行うこと)を行うことで現れた、べったりとした濃い色味。

ぼくはすごく好きなんですよね。製品染めの服が持つ独特の雰囲気。ゆるいシルエットをした服との相性が非常にいい染め方です。

 

後ろから見るとこんな感じ。かなり股上の深いサルエルシルエットをしています。ゆるい雰囲気、生地感にサルエルシルエット。ぼくが大好きなボトムスのディテールが勢揃い。

 

先ほど、前から撮った写真を載せた時点でお気付きかもしれませんが。ベルトループ付近にも黒いボタンがいくつかあって、後ろにも同じようにそれがあって。

これの正体が一体何なのかというと、サスペンダーボタンと呼ばれるもの。

言葉通り、サスペンダーを通して固定するために存在するボタンなんです。サスペンダーを肩に通して、パンツを吊り上げる。

ベルトループが生まれる前、もしくはワークウェアのフィット性を高める為に使われていたサスペンダー。1930年代までが主流と言われていますが、このパンツはそんなディテールを再現しています。

 

今となってはこのサスペンダーボタンも、前述した袖の本切羽仕様と似たような、マニアックなディテールでしかありません。

それでも、ベルトでギュッと締め上げればホックが開いてしまうほどウエストに余裕があるぼくは、本当にサスペンダーを使ってもいいのかもしれない。

 

そんなベルトループ、サスペンダーボタンの下にあるのが、シンチバック。

こちらはぼくが持っている他のボトムスにも、割と高い確率で付いているアイテムなので、前にも他の服を紹介する記事で触れていると思います。

 

またまた同じく、マニアしか得しないおまけのようなディテール。

・・・ではありますが、やっぱりウエストの大きいこのパンツを履く上で、少しだけ締めてみると、腰回りのフィット感が上がったように思えています。

 

余白が少ない分、差し込むインナーに迷うのがセットアップ

最後に、セットアップを上下で着用してみました。毎度お馴染み、着画はセルフタイマーを使って1人で撮っています。

狭い部屋で撮っているため、左右をトリミングすると画質が荒くなる。

いつも着画だけ画質が荒いことに自分でも違和感を覚えていますが、トリミングしないと部屋全体が写ってしまうんですよね。

 

そこには目を瞑って頂いて、セットアップで着てみたときの写真がこちら。

足元には同じくiroquoisの、愛用しているスリッポンを使いました。

 

ジャケットは割とジャストサイズ。少しだけ袖が長いかな、といった具合です。

ボトムスはもはや3回ロールアップして履いています。ルックのように折らずにダボっとさせて履くのも格好いいのですが、確実に裾を踏むのでアウト。

仮にこれがサイズ2だったとしても、ウエストが少し細くなるだけでやっぱりロールアップは欠かさずすると思います。

 

インナーにはとりあえず、HanesのクルーネックTシャツを。

シャツを着るよりもジャケットのノーカラーが発するミニマムな雰囲気が、そして前身頃の切りっ放し加工が際立ちます。

 

ボトムスはさすがの超オーバーサイズで履いているだけあって、股上がかなり深くて。

これくらいのサルエルシルエットが、ぼくはかなり大好きです。前述したように素材がリネンにしても重みがあるので、クタッと、そしてズドンと大胆にそして真っ直ぐに落ちてくれる感じもたまらない。

腰回りに入ったタックが映すシルエットの美しさも非常に活きています。

 

後ろから見るとこんな感じ。肩もジャストで入っていて、ジャケットのシルエットは最も綺麗なバランスで現れています。

何度も言ってしまいますが、やっぱりパンツの落ち方が最高にいいですね。サルエルパンツが、股下からストンと落ちるこの見た目。

ゆるい雰囲気でありながら、中性的になりすぎず、男らしさを感じられて大好きです。

 

今回、こうして1年越しにジャケットとパンツを買い揃えてセットアップを着ることになりました。

これがスーツのようなセットアップなら、インナーにはシャツもしくは白無地Tシャツを差し込んで、制服のように着てしまったっていいと思っています。

 

しかし、この上下は明らかにそれとは掛け離れた着方をした方が面白いはずで。

スーツ以外のセットアップは初めて着ました。それまで、インナーには適当に白無地Tシャツを突っ込んでおけばいいのかな、と思っていたのですが、実はこれが意外と難しいところでもあって。

セットアップって、自分で決めるまでもなく着るジャケットとパンツが決まっているから、余白がかなり少ないんですよね。

一般的なコーディネートを組むなら、それはシューズとインナーくらい。その他、被り物やアクセサリーを足す手段もあるけれど、基本的にはその2つ。

 

このセットアップの場合ならシューズはカジュアルなスニーカー以外ならいいとして、考えるべきはインナーなんですよね。

写真のように白無地Tシャツを合わせてもそれなりには仕上がるけれど、どこか味気ない。

無骨さを演出したいのであれば、これで十分かもしれません。それでもどこか物足りない感覚を、どうしても感じてしまいます。

 

今はまだ暑い日もあれば寒い日もある時期なので、インナーは半袖Tシャツで十分。これから気温が下がってくれば、インナーには長袖の柄シャツを仕込んでみてもいいかもしれません。

麻素材で作られたセットアップ。本当は春夏コレクションのアイテムですが、秋に差し掛かった今こうして着るにも丁度いい生地感をしていて。

少しずつ気温が下がっていくこれからの季節、リネンのセットアップを着ながらインナーに変化を与え、自分にとって最もしっくりくる最適解を探る。

 

単調にならないよう、そして物足りない感覚を感じない組み合わせを探りながら、この時期を楽しんでいきたいと思います。

初めてのセットアップ。いきなりハードルの高いものを選んでしまったけれど、これを着こなせたらきっと楽しいはずだ。

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いわた

いわた

洋服の経年変化を愛でるファッションブロガー。自分で着たい服を作ることも。 個人ブログ「いわタワー」も運営しています。

【4月28日(日)】映画「The True Cost」上映会を開催します



2019年4月28日(日)に新宿にて映画「The True Cost」の上映会を開催します。

ファストファッション人気の裏で低賃金、重労働に苦しむ人々がいる事実を写したドキュメンタリー。

洋服が好きな人のみならず、全ての洋服を着る人々に見て欲しい作品なので、上映会を開催することにしました。

ファッションとは何か、なぜ人は服を着るのかを今一度考える機会に必ずなってくれます。