理想のファッション、そのもの。1着で全てを体現する憧れのタイロッケンコート

この記事を書いている今日はめちゃめちゃ涼しくて、久々にエアコンを稼働させずに過ごしました。

もうすぐ秋がやってきて、すぐに冬がやってくる。今年の冬はどんな格好をしようかな?

 

涼しくなった外の風を浴びながら、そんなことを考えていたとき。少し前にネットで購入したコートが届きました。

今年の秋冬は、こいつにも活躍してもらおう。クラシック音楽界の異端児と呼ばれた男、エリック・サティが作り出す楽曲の世界観を表現した1着のロングコート。

 

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iroquois 16AW Collection “ERIC SATIE” タイロッケンコート

このブログではお馴染み、ぼくが好きなブランドのiroquois。

2016年秋冬コレクション”ERIC SATIE”より、ドビーワッフルタイロッケンコートを購入しました。

 

発売当時も、格好いいなとは思っていましたが、基本的にショートブルゾン派のぼくはロングコートがあまり得意ではないため、購入を見送っていました。

それから2年が経とうとしている今、ネットにて1万円弱で購入。定価は7万円近いのですが、二次市場では高い値段が付きにくいこともブランドの特徴。

とんでもなく丁寧かつ、異常なまでのこだわりを持って服作りをしている数少ないブランドのひとつ。

旗艦店へ行けば人気アイテムは即完なんてことも頻繁にありますが、ブランド古着としての人気はそこまで高くありません。

決して若者ウケするデザインではないため、お客さんの年齢層はやや高めなのではないでしょうか。

そのため、流れてきたとしてもお金のない若者がお客さんに多いブランド古着屋では人気がない。二次市場での価格が安い理由は、そんなところにあるかもしれません。

 

ぼくはかつて、JOHN LAWRENCE SULLIVANのチェスターコートを10万円で購入しておきながら、今に至るまでほとんど着ていないという失態を犯しています。

だから今回も、ロングコートを買うかどうかは少しだけ迷っていて。

 

振り返ってみれば当時ぼくの周りにはモードブランド好きがたくさんいて、自分で自分の”好き”を認められずにいたぼくは、モードこそ正義と思っていました。

お洒落な友達は皆、モードブランドの服に身を包んでいる。モードブランドを着てこそ本当の服好きであり、お洒落な人なんだ。

そんなことを考えていたこともあり、サリバンのコートに手を出しました。それでも、やっぱりぼくが好きなブランドは”そっち”じゃなかった。

 

やっぱり、ゆるい服が好きなのでした。自分はオールブラックやモード系のファッションが似合う人間でも、好きな人間でもない。

自分が”お洒落”に代表される第一線の世界を好む人間ではなかった事実を受け入れ、気持ちに素直になれたのはここ数年のことです。

本当のぼくが選んだのは、同じロングコートでもジャンルがまるっきり別でした。そのフィールドで改めて、ロングコートへの挑戦を。

 

流行で例えると分かりやすいですが、流行っているものが全てじゃないと思えるようになったんです。

自分が好きなものを、胸を張って好きだと言えることが何より格好いい。自分が好きだったり得意なジャンルに特化して魅力を磨いていけば、自分だけが持つ格好良さが生まれる。

だからもう、自分の気持ちを偽ることは辞めました。

 

細部まで徹底的にこだわった、唯一無二のオリジナリティー

詰めすぎず、かと言って空きすぎることなく、ウールコートとして冬に着れるだけのクオリティーを誇っているであろう生地表面。

ふんわりと織られたそれは、どこかゆるい雰囲気を感じさせてくれます。

iroquoisが定番展開しているキャスケットでも、秋冬シーズンで採用されることがある”ドビー織り”という手法を使って仕立てられたもの。

詰めて織られて訳ではないので、きっと機能性の高いブルゾンには保温性の面で負けると思います。

それでも、どこか頼り甲斐のありそうな見た目が何だか、いいんですよね。

 

タイロッケンコート。調べてみれば、本来この名称はイギリスのバーバリーが開発したベルト締め仕様のダブルコートを指す言葉だそうです。

それが今では、バックルを使ってベルトを締めるロングコート全体を指す名称として広がっていったんだとか。

 

前身頃のベルトだけで締めると見せかけて、付近には比翼仕様でボタンが2つ、付いています。

これらを留めた後でベルトを締める。ボタンがあればベルトは不要な気もしますが、寒い冬はできるだけ服と体の間に風が通る隙間を作らないことが防寒のコツ。

ボタンだけを留めて着ることは少ないと思うので、開いたままで着る、もしくはボタンとベルトの両方を使って身幅を絞って着るか、のどちらかを選ぶことになりそうです。

 

ボリュームのあるボアで大振りな襟にアクセント

Pコートやチェスターコートでは見かけないディテールが満載なことから、ベルト以外のディテールも目を引くiroquoisのタイロッケンコート。

ぼくがこのコートを気に入った理由はたくさんありますが、まずは襟元から。

 

大振りの襟に、これでもかと言わんばかりにインパクトを足したボリュームのあるボア。

元々、Pコートを着るにしても襟は大振りな方が美しさを感じていました。この時点で、ジャケットのラペルにしてもきっちり細めなモードブランドとは好みが真逆。

よく”襟にボアを足すことで防寒性を上げました”と謳っているコートがありますが、襟元のボアで本当に上がるものなのでしょうか。

確かにないよりは暖かいと思いますが、直接体に触れる部分でもないので、果たしてどれくらい実用性があるのかは気になるところ。

個人的には、これは装飾性を増すことの方に意味があると思っています。

 

ジャケットの如く本切羽仕様に仕立てられた袖元

袖に付属したボタンは飾りではなく、本当に外れる本切羽仕様になっています。

これもいいお値段のするコートではよく見る仕様ですが、使うことってほとんどないような。

ただ、袖のボタンは間違いなく見た目にエレガントさを添えてくれます。

 

・・・ここまであまり肯定的な意見を書いていない気がしますが、あくまでも雑なぼくが不要だと思うディテールというだけで。

一見、不要にも思える細かな部分にまでこだわって服作りをするのは、さすがのiroquois。

ぼくがこのコートに惚れ込んだ本当の理由は、ここからご紹介していきます。

 

特異なディテールとして一際目を引く巨大なポケット

このコートを見たとき、何より目を引くのが見頃に大きく取り付けられた、ふたつの巨大なポケット。

”タイロッケン”コートなんだから、タイロッケンコートをタイロッケンコートたらしめるベルト部分が最も目を引くディテールだと、普通は思うもの。

しかし、このコートにおいては主役を差し置いて巨大なポケットがどうしても注目を集めてしまいます。

 

だって、こんなに大きいんですよ。横幅だけで文庫本ほぼ2冊分くらいはあって。

近くのカフェへ行くだけ、このコートをサラッと羽織り、スマートフォンと財布、文庫本をポケットに入れて身軽に外へ出れちゃうくらい。

それこそ、太宰治が着ていそうな見た目のコートですよね(人間失格しか読んだことがないぼくのイメージですが)

 

ポケットのフラップには、かなりしっかりした布が充てられているんですよね。

このお陰で巨大なポケットの、巨大なフラップもヘタりません。ポケットを綺麗に魅せてくれるのは、紛れもなくこれのお陰なのでしょう。

細部にまでこだわって作られていることに、感心の連続です。

 

これがなくちゃ始まらない。前身頃で存在感を誇る特徴的なベルト

そして、タイロッケンコートをタイロッケンコートたらしめるメインのディテールとしてのベルト。これがなくちゃチェスターコートと呼ばれてしまうのかもしれません。

前述したように、裏にはボタンが2つ付いています。一応、なくても機能はしますが、ボタンを留めて着るならベルトも一緒に締めたいところ。

 

実用性だけじゃない。”凝りすぎ”な裏地の美しいキルティング模様

ここまでご紹介してきたディテールは主に機能性の面で作用している部分が大きいものたちでした。

一方で、実用性があるだけではなく、もはや”凝りすぎ”と感じさせるまでに細部のディテールにこだわるのがiroquoisというブランドなのです。

 

前身頃を開けば、一面に広がるはコートの裏地。ポリエステルから成るそれに、薄く中綿を詰めたそれはどんなコートでも見かけると思います。

そこにまでiroquoisは職人的なこだわりをゴリゴリに魅せてくるんです。この裏地、ただの裏地ではなくて。

 

16AWコレクションで登場したアウターの裏地には、共通してオリジナルのステンドグラス模様でキルティングが施されています。

これがもう、美しくて。ただ袖通しを良くするため、保温性を高めるための裏地にするのではなく、そこにまで細かく芸術的な刺繍を施してしまう。

もう、本当に至れり尽くせりな1着です。なんて贅沢品を手に入れてしまったのでしょうか。

 

ボタンに至るまでオリジナル。刻んだブランドロゴとシーズンテーマ

袖、前見頃、ポケットには、それらを留めるためのボタンが付いています。

近づいてよく見てみると、何やら模様が刻まれていて。

こちらもキルティングに同じく、シーズンを通して採用されているボタンの柄。テーマがERIC SATIEなだけあって、音符を象ったデザインのように見えます。

 

ちょっと分かりづらいかもしれませんが、前見頃部分のボタン裏を覗いてみると・・・。

”iroquois”とブランド名が刻まれているんですよね。しかも、こちらもシーズンテーマに沿って”i”の部分が音符になっています。

もう、こんな所に至るまで本当に細かい。細部にまで、とんでもないレベルでこだわるのがこのブランド。

ボタンをオリジナルで作るのはデザイナーズブランドならよくあることですが、ここまでしてしまうブランドは、あまり見たことがありません。

 

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袖を通せば見た目に反してゆるさを感じるシルエット

最後に袖を通してみると、以外にも着たときのシルエットからはゆるい雰囲気が漂ってきます。

ハンガーに掛けたそれの姿を見る限り、なかなかカチッとした年代モノのロングコートのような雰囲気を魅せてくれるのではないかと思っていました。

 

大振りな襟、少しだけ落として丸みを帯びた肩が、その予想に反してゆるい雰囲気を演出。

タイロッケンコートでありながら、コクーンコートかのような見た目にもなっています。

にしても、まだまだ夏なので履いている靴下はローカット。スリッポンの隙間から見える素肌が季節感を麻痺させてしまっていることに、記事を書きながら気付きました。

 

ボタンを留めてベルトを締め、身幅をギュッと絞ってみると、少しばかり無骨さが垣間見えます。

もう少しゆるさを排除した、ヴィンテージのロングコートに見られるような男らしさがあった方が好きですが、ぼくは締めたときの見た目を気に入っています。

これにキャスケットやハットを被って、丸メガネを掛けて、パイプなんて咥えながら、タイムスリップしたかのようなファッションを楽しんでみたいもの。

 

どこかゆるい雰囲気を感じるものだったり、時にゴリゴリの男らしさを感じさせる、ヴィンテージ古着のようなものだったり。

そのふたつを掛け合わせて、ゆるすぎず、かといってゴリゴリ過ぎない、絶妙な男らしさを感じさせるファッションがぼくはとても好きで。

今は、いつかは2つの要素をぼくが気持ちいいと思えるバランスで融合させた、自分だけのスタイルを確立したいと思いながらコーディネートの腕を磨いている最中。

 

iroquoisのタイロッケンコートは、ぼくが大好きな2つの要素をひとつの洋服の中で、絶妙なバランスで掛け合わせたなかなか珍しいアイテムだと思っています。

このコートが持つ魅力を、雰囲気を、最大限に活かせるファッションを、いつか完成させたい。それまで大切に着続けていたい、素敵な相棒に出会うことができました。

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いわた

いわた

洋服の経年変化を愛でるファッションブロガー。自分で着たい服を作ることも。 個人ブログ「いわタワー」も運営しています。

YouTubeチャンネル「いわたの偏愛コレクション」