冬アウターのお気に入り。LAD MUSICIANのスタジャンが機能性、デザイン共に最高だ

LAD MUSICIAN。洋服が売れない今の時代においても、強固なファンを持ち独特の世界観で日本のファッション業界に存在する老舗ブランド。

「音楽と洋服の融合」をコンセプトに、20年以上続くコレクション。特に20代前半から厚い支持を受けているといった印象。

モードファッションに目覚める頃、誰もが一度は通ると言っても過言ではないのでしょう。

振り返ればぼくにも厨二病ならぬ大二病な時期があって、やや長めの髪にオールブラックのコーディネートというスタイルにこだわりを持っている時期があった。

それを形成するために、LAD MUSICIANの洋服は欠かせなかったので、足しげくお店に通った記憶がある。

42/44/46の3サイズで展開されるアイテムはそのどれもが非常にタイトな作りになっていて、いちばん大きい46でさえユニクロのSサイズと変わらない気もした。

ぼくはいつも44サイズのアイテムを好んで買っていた。とはいえシャツとTシャツを何着か持っていたくらいだと思うけれど。

 

それから数年が経った今、ぼくは古着やそこにインスパイアされ服作りを行うブランドが好きでたまらない。

つまり当時とは趣味が180度変わってしまった訳だけれど、それでも未だ手放さずに持っているLAD MUSICIANのアイテムが1着だけある。

それが、数年前までブランドが定番で毎シーズン展開していたスタジャンだ。

ぼくはこのスタジャンに不思議な魅力を感じて手に取り、好みの系統が全く変わった今でもたまに、クローゼットから引っ張り出して着ることがある。

その度に思う。この服はとんでもない名作だと。

元々は野暮ったいアイテムだったスタジャンをここまでミニマルに、そしてスタイリッシュに昇華させたこの1着はもはや素晴らしい芸術作品だと思っている。

 

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LAD MUSICIANのスタジャン

そもそも『スタジャン』とはスタジアムジャンパーの略称で、元々はアメリカの野球スタジアムで寒さを凌ぐために生まれたアイテム。

カジュアルなアウターの代表格とも言えるそれを日本で目にするとすれば、アメカジ系の古着屋さんか量販店であることがほとんどなはずだ。

LAD MUSICIANが提案するダークでスタイリッシュな世界観と、カジュアルなファッションとは正反対に位置している。

それが融合するはずもないと思っていたところに、デザイナーの黒田さんはあえて突っ込んだのだろう。

初めてこの1着を目にしたとき、率直な感想として「この服は、カテゴリー分けをするならなんと呼ぶんだろう?」と思った。

しかし説明を聞いてみればスタジャンだというのだ。

確かにウール生地で作られた身頃、レザー素材を駆使したアーム部分。本家のディテールはそっくりそのまま受け継いでいる。

それにしても新しいアイテムだと思った。個人的に言わせてもらえば、このアイテムは本家『スタジャン』の魅力を圧倒的なまでに凌駕している。

あまりにも衝撃的だったけれど、ぼくはそんな理由だけ洋服を買うことはほとんどない。

好みの系統が変わってまでずっと手放さずに持っていることには、たくさんの理由があるのだ。

 

各部分の素晴らしきディテール

洋服を買うときにまず見る部分といえば全体、そして細部のディテールだろう。

このスタジャンは細部に至るまで、ぼくの理想を完璧に叶えてくれるだけのクオリティーを誇る、まさに”完璧”と呼ぶに相応しいアイテムだ。

 

スタジャンといえば身頃と袖部分におけるウールとレザーの切り替えが最大の特徴。

ぼくが持っているのは2011年秋冬のアイテムだったと記憶している。腕部分には牛革を使用したモデルで、それもかなり硬さがあるので触れると馬革と錯覚するかのような印象だ。

もっとも、こうして写真を撮ってみると馬革ほどのハリはないので簡単に判別はつくけれど、触れてみると牛革っぽくない質感をしている。

この、少し乱暴に着ても耐えてくれそうな強度と、それを時間をかけながらクタクタにさせていくロマン。

『経年変化』という言葉は、洋服好きにとってのマジックワード。ぼくが洋服を好きな理由の何割かは、そこにあるロマンに詰まっている。

 

身頃にたっぷりと採用されたウール生地は細かく毛羽立ちながら上質で柔らかいものが採用されている。

スタジャンというとガチガチに固めたメルトンウールを想像するものだけれど、これは違う。

空気を含めば柔らかく膨らみそうな、優しい雰囲気を持つ生地感。

どこかふんわりとしつつも、日本のモードファッションを牽引するブランドにありがちな頼りなさは、ない。

しっかりと厚手で、丁寧に仕上げられたであろう、真冬でも安心して羽織れるだけの頼り甲斐ある生地感だ。

この柔らかい手触りからは想像もつかないほどに、気温の低い日だってバッチリ体を寒さから守ってくれる。

 

Pコートやチェスターコートしかり、どれだけしっかりとしたメルトンウールを採用していようが、それだけでは関東の冬でさえ凌ぐことはできない。

このスタジャンが他と違うのは、防寒性を表に採用されたメルトンウールだけに頼っていないところ。

しっかり張られた裏地とウール生地の間には、中綿として機能性素材のシンサレートをたっぷり含んでいるのだ。

シンサレートは昨今、羽毛(ダウン)をも凌駕する暖かさを誇る中綿として大人気。LAD MUSICIANはそれをここにも採用した。

普通、日本に存在するおおよそのモードブランドは「おしゃれは我慢」と言わんばかりに防寒性が心配なアウターしか作らない。

スタイリッシュであることが全て。その為には下手に機能性を追加して野暮ったくなることは避けたいのだろう。

洋服には実用性や機能性を求めるぼくは、真冬になっても頼りないアイテムしかお店に並べないモードファッションにおける暗黙の了解に呆れて離れた部分も少しある。

LAD MUSICIANはその面でも、機能性と見た目の格好良さという、どちらかを取ればどちらかを捨てなければいけない部分においてもそこを両立させた。

当たり前のように思えるかもしれないけれど、「いかにスタイリッシュさを追求するか」ばかりに重点を置きがちなシーンにおいては革命的なことなのだ。

 

加えてスタジャンをスタジャンらしからぬ風貌に仕上げた最大の特徴としては、表面に採用されたこのジップの影響が大きいだろう。

カジュアルなスタジャンであれば普通、スナップボタンをでかでかと配置するはずだ。

アイコニックなボタンとウール生地・袖レザーの切り替えあってこそのスタジャン、というイメージ。

この1着は違う。ジップを採用する辺りまでは珍しくないかもしれないが、加えてそれを閉めたときには見えないよう比翼仕様になっているのだ。

シャツにおいても、ボタンが見えればカジュアルに。比翼仕様になり隠れていればフォーマルな印象を抱くことがある。

ブランドが得意とするスタイリッシュさを追求するための手法をスタジャンに採用したのがこの1着だ。

ありそうでなかったこの発想が、スタジャンをスタジャンらしからぬ風貌へと変化させてしまった。

モードファッションへ違和感なく溶け込める異彩を放つスタジャンが完成した。

 

首と襟部分にもルーツを受け継ぎリブを配置している。

どちらも柔らかく伸縮性がある。

首部分に関しては普通に折って着てもやや高めになるよう設計されており、それがまたカジュアルなスタジャンを高貴な印象へと昇華させた一因と言えるだろう。

 

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完璧なる芸術作品。異ジャンルの融合

アメカジファッションの王道アイテム、スタジャンは『LAD MUSICIAN』というフィルターを通したことで完全に次元を超えた洋服になった。

真逆に位置するとも言える、アメカジとモードの融合。それをここまで見事なクオリティで実現させたこの1着は、もはや芸術作品と言っても過言ではない美しさを放っている。

全てがスタイリッシュに昇華されつつも、ルーツはしっかり引き継いだ。

昨今の音楽シーンではスタジャンを着たアーティストが目立ったが、それを振り返ってもブランドが掲げる「音楽と洋服の融合」というコンセプトは微塵もブレていない。

ブランドらしさとしてのミニマルかつスタイリッシュな雰囲気、芸術性の高さ。袖を通すだけでワクワクする。

それでいて実用性にも長けているので真冬でも頻繁に着れてしまう。

どれだけ好みの系統が変わったところで、ぼくがこの1着を手放さない理由はそこにある。ジャンルや好みを越えて、完成された服はいつだって美しいのだ。

LAD MUSICIANというブランドが生み出した芸術作品。真冬に着る洋服としての実用性。ブランドの偉業とも言える最高のアイテム。

ここ数年はコレクションにも登場しなくなってしまったが、もしブランド古着屋で見かけた際には是非、触れてみて欲しい。

個人的には過去を振り返っても、2011年秋冬モデルが最も美しいと思っている。

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いわた

いわた

洋服の経年変化を愛でるファッションブロガー。自分で着たい服を作ることも。 個人ブログ「いわタワー」も運営しています。

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